アトピー性皮膚炎への対処・治療方法
症状や原因
アトピー性皮膚炎の治療は、スキンケア、アレルギー反応の抑制、炎症の抑制を目的として、薬による治療を中心に行います。この疾患は、完全に治るケースは非常に少なく、いかに日常生活を支障なく、送ることができるかが最も大切なポイントとなります。
⭐️治療目標
・症状がない状態、あるいはあっても日常生活に支障がなく、薬物療法もあまり必要としない状態
・軽い症状はあっても、急に悪化することなく、悪化してもそれが続かない状態
症状によって薬の使い方が変わってくるので、そのときの状態に合った治療を続けることが大切です。
また最近では、アトピー性皮膚炎の原因にはアレルギー機序のみだけではなく、皮膚のバリア機能障害が大きく関与していることがわかってきました。よって保湿することの重要性があらためて再認識されています。
●外用療法
・皮膚の炎症を抑えるために、ステロイド外用薬や非ステロイド消炎薬(タクロスリムetc)が処方されます。
・ドライスキンを改善するためには保湿性外用剤が使われます。
・ステロイド外用薬は、作用の強さによって5つに分類され、湿疹の状態、場所や年齢によって使い分けます。
●内服療法
・かゆみを抑えるために、抗ヒスタミン薬が処方されます。
・アレルギー反応を抑えるためには、抗アレルギー薬が使われます。
●ステロイド軟膏について
・ステロイド軟膏は決して毒ではなく、アトピー性皮膚炎の治療には基本必要不可欠なものです。使い方を間違えれば副作用もでますが、決して自己判断せず、正しい使い方で治療することで良好なコントロールが可能となります。
とは言っても、ステロイドに不安を抱いてる患者様は、多くおられると思いますので、診察の時にきちんと説明を聞き治療を開始されることをお勧めします。
●非ステロイド消炎薬タクロスリム(プロトピック)
・プロトピック軟膏はステロイド外用薬とは別の薬です。体の過剰な免疫反応をおさえてアトピー性皮膚炎のかゆみや炎症をおさえます。プロトピック軟膏の炎症をおさえる効果はミディアム(マイルド)クラス~ストロングクラスのステロイド外用薬と同じくらいです。
→ 非ステロイド消炎薬タクロスリム(プロトピック)小冊子PDF
●JAK阻害剤 デルゴシチニブ軟膏(コレクチム軟膏0.5%)
・細胞内の免疫活性化シグナル伝達に重要な役割を果たすヤヌスキナーゼ(JAK)の働きを阻害し、免疫反応の過剰な活性化を抑制することでアトピー性皮膚炎を改善する、非ステロイド性の世界初の外用JAK阻害剤です。(2020年6月に発売)
この機序はこれまでのアトピー性皮膚炎の治療薬「ステロイド」「プロトピック」などとは全く異なる機序で、新しいお薬となります。
例えば、顔の皮疹で、特に目のまわりに頑固な皮疹がある方、プロトピックが痒みや
ヒリヒリ感のために使いづらい方、などに良いのではと思います。
*薬を使用できない方
・16歳未満の方
・妊婦さん、授乳婦さん
→ コレクチム軟膏0.5% 小冊子PDF
●ヒト型抗ヒトIL4/13受容体モノクロナール抗体 デュピルマブ(遺伝子組換え)製剤
「デュピクセント皮下注300mgシリンジ」
IL-4/13によるシグナル伝達を阻害し、アトピー性皮膚炎の病態に深く関与するTh2型炎症反応を抑える、世界初のヒト型抗ヒトIL4/13受容体モノクロナール抗体(生物学的製剤)です。
投与方法:通常、成人には初回に600mg、2回目以降は300mgを2週に1回皮下注射します
効能:既存治療で効果不十分なアトピー性皮膚炎
→ デュピクセント 小冊子PDF
★ アトピー性皮膚炎のスキンケアと生活時の注意点
1)1日2回の保湿剤の外用
2)入浴・シャワーにより皮膚を清潔に保つ
3)室内を清潔に保ち、適温・敵湿の環境を作る
4)規則正しい生活をおくり、暴飲・暴食は避ける
5)刺激の少ない衣服を着用する
6)爪は短く切り、掻破による皮膚障害を避ける